paris magnum

(2017)

1947年、ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ジョージ・ロジャー、デビッド・シーモアによって「写真家自身によってその権利と自由を守り、主張すること」を目的として写真家集団・マグナムは結成された。以後、マグナムは20世紀写真史に大きな足跡を残す多くの写真家を輩出し、世界最高の写真家集団として今も常に地球規模で新しい写真表現を発信し続けている。

本図録は、2014年12月から翌年4月までパリ市庁舎で開催され、大きな反響を呼んだ展覧会の海外巡回展として企画され、2017年京都文化博物館で開催された「パリ・マグナム」展のために作られた図録。芸術の都・パリは、多くの歴史的事件の舞台であり、かつ、写真術発明以来、常に「写真の首都」でもあった。20世紀の激動を最前線で見つめ続け、現代においても現在進行形の歴史をとらえ続けるマグナムの写真家たちが本図録に収録されている写真作品で提示する豊穣なパリのイメージは、都市とそこに生きる人々の歴史にとどまらず、写真表現の豊かさをも我々に提示し、世界を発見する驚きに満ちた写真家たちの視線を追体験させてもくれる。


第一部 マグナム・ビフォア・マグナム 1932—1944
マグナムの創設メンバーであるロバート・キャパやアンリ・カルティエ=ブレッソン、デビッド・シーモアはマグナム設立以前から、時代の証言者として、歴史に名を残すことになる写真をすでにとらえていた。

第二部 復興の時代 1945—1959
パリ解放の勝利に沸き立つ興奮がおさまり、冷静になった人々が目の当たりにしたのは戦争で荒廃した街の姿であった。経済的にも厳しい状況が続く中、新しい体制が築かれて行く姿を紹介する。

第三部 スウィンギング・シックスティーズ 1960—1969
ミニスカート、ロック・ミュージック、ポップアート、ヌーベルヴァーグ・・・、60年代に入ると新しい世代が台頭、世界を席巻する。中世以来、「パリの胃袋」とされていたパリ中央卸売市場「レ・アール」の郊外移転計画は変わりゆくパリを象徴する。社会に対する若者たちの怒りは、カルチェ・ラタンに端を発する学生運動という形で爆発し、ヴェトナム戦争反対運動と相俟って世界に波及した。

第四部 多様化の時代へ 1970—1989
社会秩序の回復を求める声が高まる一方、慣習からの脱却を求める動きも活性化する。戦後の国際社会で重要な哲学的支柱を担ったジャン=ポール・サルトルはパリのアパートの一室で左派日刊紙「リベラシオン」を創刊し、男女平等を求める女性たちは街でデモ行進を繰り広げ、映画や演劇の世界でも新たな才能がパリで活躍し始める。社会が多様化する中、写真家たちの表現方法も多様化していく。

第五部 解体の時代 1990—2014
現代においてもパリは多くの人を惹きつけてやまない大都市であり続けている。一方で、現代を呼吸する写真家たちが提示するこの街のイメージからは、かつての「花の都」の面影を見つけることは難しくなってくる。写真というメディアが、技術の発展とともに、より写真家自身を表現するものになってきたこととも無縁ではないだろう。また、インターネットの普及は「写真」そのものの在り方自体に大きな変革を迫ってきている。


体裁:ソフトカバー・167ページ
定価:
2,484円(税込)


編集:
佐藤正子(コンタクト)

編集協力:小川潤子(マグナム・フォト東京支店)
ブックデザイン:島田隆

印刷・製本:野崎印刷株式会社
発行:コンタクト


 

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